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春日部の茶製造販売店「おづつみ園」60周年 茶園から人と人をつなぐ店へ

(左から)尾堤宏社長、英雄会長

(左から)尾堤宏社長、英雄会長

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 茶製造販売店「おづつみ園(春日部市粕壁2,TEL048-752-6610)が3月12日に60周年を迎える。

昭和40年代、改装前の東口本店

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 春日部東口本店、西口ふじ通り店、イオンモール春日部専門街店、武里団地店の4店と、日本茶カフェ「茶寮 はなあゆ」を運営する同店の歴史は、茶園から始まった。明治初期、春日部の内牧地区で農業を営んでいた初代尾堤卯三郎さんは、酒好きとして知られていた。

 「当時は酔い覚ましにお茶が飲まれていて、お酒を飲むならお茶もたくさん飲んだ方が良いと周囲から言われた祖父が、自身の健康のために狭山から茶種を仕入れて蒔き、無農薬で緑茶栽培を始めた」と3代目の英雄会長は話す。

 2代目の政右衛門さんは当時の農協組合長だった。米農家が多い地区だったが近隣農家の新たな収入源となるように自費で茶の植樹を勧め、茶栽培を広めたという。茶製造とでんぷん精製工場を営んでいたが1960(昭和35)年、3代目英雄会長が29歳の時、小売店として同店を開いた。

 「東京に茶を販売に行った時、詐欺に合った。その経験から、これからはお客さんに直接販売したいと思い店を開くことにした。開店した頃、農業振興で近隣農家を助けていた父・ 政右衛門の功績で、多くの農家が買い来てくれ行列ができ、感激した。これまで夢中でやってきて、60年はあっという間。ちっとも長いと思えない」

 「店が忙しく、息子の面倒があまり見られなかったことは後悔している。息子が小さい頃は、茶箱の中に座布団を敷き、息子をその中に入れて店先に置いていた。お客さんがあやしてくれたり、銭湯に連れて行ってくれたりした」と英雄会長は振り返る。

 4代目の宏社長は、大学4年生の春「伝統がある業界だが元気が無かった。でもその中で新しい挑戦ができるのではないか」と店を継ぐことを決めた。静岡県の茶農家や日本茶の研究所で合わせて2年、神戸の茶小売店で3年半修業し、地元に戻った。ロビンソン春日部店への出店、西口店やカフェ新店オープン、茶摘み体験などのイベントも始めた。「未経験のことを任されプレッシャーを感じることもあった。いろいろなことをやってきて、失敗のほうが多いかもしれない」と宏社長。

 「父はすごい人だと思う。この店を作り上げたのは父だし、商工会でまちのことに尽力し、まちのため人のために動いていた。とにかく真面目で尊敬している。私は父が引いてくれた古いレールに新しい電車を走らせる覚悟」と話す。

 販売商品は、春日部市の「かすかべフードセレクション」に第1回から認定されている「伝承銘茶 粕壁宿」(90グラム、972円)、埼玉県産の小麦粉を練って焼いた皮に、抹茶小豆の生クリームを挟んだ生どらやきの「お茶の子やき」(194円)、各店舗で濃厚な宇治の抹茶を加え、着色料や香料を使わない「抹茶ソフトクリーム」(300円)などがある。

 宏社長は「カフェではお茶のある空間を提供している。これからは、お茶を通して人と人をつなぐなど、お茶を売る店からお茶のある時間を提供する店にしたい。今、お茶と合わせて新たなものも計画中で、伝統的な飲み物だからこそ、新しい伝え方をしていきたい」と意欲を見せる。

 東口本店の営業時間は9時~20時。

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