春日部市は7月3日、NPO法人「ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク」(東京都世田谷区)と「災害時における避難所用簡易間仕切りシステム等の供給に関する協定」を締結した。
2014(平成26)年にプリツカー建築賞を受賞した建築家 坂茂さんが代表理事を務める同NPOは、東日本大震災や熊本地震などの発生時に避難所に避難所用・紙の間仕切りシステムを設置するなど、国内外の大規模災害発生時に被災者への住環境に対する支援事業を行ってきた。
協定は、災害時に同団体から避難所用・紙の間仕切りシステムと、ハニカム製簡易ベッドの提供を受けるもの。間仕切りシステムは、長さ2メートルの紙管をフレームとし、カーテン状の布を掛けたもので、2メートル×2メートルで囲まれる空間ができる。プライバシー確保だけではなく、飛まつ拡散防止や3密回避にもつながるという。
同NPOはこれまで多くの自治体と災害時協定を締結しており、8府県、11市、2町、11区に及ぶ。埼玉県内では春日部市が初めてとなる。
中央公民館(春日部市粕壁)で行われた締結式で、石川良三市長は「近年全国各地で大規模な災害が発生しており、災害への備えとして食料や、救援用機材などの充実はもとより、避難者のプライバシー保護対策も求められている。新型コロナウイルス感染症の流行により、感染症防止対策の必要性も高まっており、避難所環境の改善が喫緊の課題。プライバシー保護や感染症対策として活用できる製品供給に関する協定を締結できることは大変心強い」と話す。
坂さんは「私は阪神淡路大震災の頃からこのような活動をしている。間仕切りを作り始めたのは2004年の中越地震の時から。東日本大震災の時には約2000ユニットを設置した。それから迅速に供給できるよう、自治体と災害時協定を結ぶようになった」と話す。
「避難所でプライバシーを保つことは大切。さらに今、避難所ができたら、飛まつ感染やクラスターが発生してしまうと2月に感じた。地震が起こり、連絡が来て設営すると数日掛かる。避難してくる人が来る前に設営する必要があるため、協定を結んでいるところと協議し、3月から間仕切りシステムなどの備蓄を進め、春日部でも対応していただくことになった。地震だけでなく台風や豪雨が発生しやすい夏前に締結できたことを感謝している」と力を込める。
市では同団体の避難所用間仕切りシステム560ユニットと、ハニカム製簡易ベッド280セットを購入している。13日からは市職員が避難所設営の訓練の一環として、検温をはじめとした避難所受付の対応方法や新型コロナウイルス関連対策資材の設営訓練などを行い、災害時に備えるという。