春日部市内唯一の現存する銭湯ながら10年前に廃業した「富士の湯」(春日部市粕壁3)のシャッターが再び開き、市民がつながることのできるイベントなどでの活用に向け動き出した。
開かずの大踏切のほど近く。小さな路地を入ると、昭和の時代にタイムスリップしたような懐かしい世界が広がる。そこには木々に守られるように覆われた古い建物があり、入り口上部の曇りガラスには蛍光灯に照らされ辛うじて読み取れる「富士の湯」の文字。
銭湯の中に入ると、長年シャッターが閉まっていたため年季の入った匂いがするが、古いマッサージチェアや扇風機、髪の毛を乾かす「お釜ドライヤー」、番台などが、昔の日本を彷彿とさせる。
「富士の湯」は、春日部市内にいくつかあった銭湯の一つ。2008年に廃業し、シャッターが閉まっていたが、現存している唯一の銭湯でもある。
同湯の活用に取り組むのは「まちなかツナガルプロジェクト」。2018年春に若い世代でも楽しめる「桜咲くマルシェ」を開催し、市のシンボルの一つである公園橋に桜の木を作るなどして多くの市民でにぎわった。「また市民がつながるような、春日部が活性化するようなことがしたいと思っていたところ、富士の湯の存在を知った」と代表のナオナさん。現在は、春日部市都市計画課、日本工業大学 佐々木研究室・ 木下研究室、そして市民らと「かすかべ銭湯プロジェクト」を立ち上げ、同湯で市民がつながることができるようなイベントを企画している。
「お湯は出ないが、市民の憩いの場だった場所を、春日部の大事な資源として生かしたい」とナオナさんは話す。10月28日を予定する初のイベントに向け、現在は清掃などを行い、企画を具体化させている。