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火事で全焼した春日部のそば店「善五郎」、再建に向け長男が2代目継承決意

店があった場所で、イベントで使った垂れ幕を持つ2代目の野辺尚吾さん(右)と創業者の野辺浩さん

店があった場所で、イベントで使った垂れ幕を持つ2代目の野辺尚吾さん(右)と創業者の野辺浩さん

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 昨年火事で全焼した春日部のそば店「善五郎」(春日部市銚子口)の2代目・野辺尚吾さんが現在、再建に向け動いている。

火災前の善五郎(関連画像)

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 1984(昭和59)年11月に野辺浩さんが開業したそば店。東京のそば店で修業した浩さんが家族と共に経営し、周辺の工場で働く人やトラックドライバーなどが来店していたという。

 2023年8月、原因不明の火事により店が全焼。当日は家族で外出していたことから、けが人はいなかった。浩さんは「『まさか自分の店が…』と思った。最初はこの現実をなかなか受け入れることができなかった。今となっては、周辺に被害が及ばずに済んだことが不幸中の幸いだと思っている」と振り返る。

 浩さんの長男・尚吾さんは調理の専門学校を卒業後、料理人・道場六三郎さんが創業した日本料理店「懐食みちば」の銀座店(現・銀座ろくさん亭)や松戸の日本料理店「懐食みちば」で合わせて12年ほど働いている。尚吾さんは「もともと、いつか家業を継ぐつもりで料理の道に進んだ。3年ほど前に家に戻るつもりだったが、父も現役だったので、もう少し後にしようと思っていた」と話す。

 火災が起きたことで、尚吾さんは2代目になることを決意。「あの日、地元に住む弟から電話の着信がたくさん入っていた。駆けつけた時、両親は現実を受け止められていない様子だった。災難だったが、一からできるのは逆にチャンスかもしれないとも思った」と尚吾さん。現在も松戸の店で働きながら、休みの日に実家に戻り、再開に向けた打ち合わせを重ねている。

 今年4月、尚吾さんは友人が開いたイベントに「善五郎」として出店し、フードを販売した。尚吾さんは「当店を知っている人が何人もいて、『店に行ったことあるよ』などと声をかけてもらった。自分で一から考え調理した商品を直接販売する初めての経験ができ、最初は緊張したが、『おいしい』と言ってもらえて自信が付いたし、モチベーションも上がった」と話す。

 長男が店を継ぐことについて、浩さんは「店は自分の代で終わると思っていたので、継いでくれるのはうれしい。今仕事でやっていることはできるかもしれないが、そばについては、自分がやってきたことを教える。世の中、景気が良いわけではないが、やるという以上、一生懸命やってほしい」とエールを送る。

 店は、以前の店があった敷地内で再開する。当初は店が40周年を迎える今年11月の再開を予定していた尚吾さん。「限られた時間でやりくりしているため少し遅れていて、目標は来春。皆さんに自分が作った料理で喜んでもらいたい。以前の店は、子どもの頃から自分の友人や家族など多くの人が集まる場所だったので、そのような場にもできたら。火事の後片付けの際、たくさんの友人が助けてくれた。とても感謝している。店をやることで恩返ししていけたら」と話す。

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