「海の日」の7月17日にSNSの投稿で「海がないこと」に触れる埼玉県民は多いが、海はなくとも海までの距離を示す「距離標」が春日部にあることを知る市民は少ない。
7月の第3月曜日は「海の日」。今年は17日で、国土交通省のホームページによると、「海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う日」。海にまつわるイベントを行う地域も多い。
埼玉県には海がないことから、県民の間では「埼玉は海なし県」「埼玉県民は海に憧れている」などと、SNSなどで日常的に話題になることがある。17日も、ツイッター上で、「海の日だけど埼玉には海がない」「埼玉県民には関係ない海の日」「海には憧れがある」などのツイートが見られた。
海はないものの、春日部市内の江戸川沿いには「海から50km」と書かれた茶色い距離標や「海から50.25Km」「海から50.5Km」などの標識がある。何のためにあるのか知らない市民も多いのではないだろうか。
これらの距離標について以前ツイートした市民がいた。市内在住の三輪祐子さんは、距離標の写真と共に「埼玉県民の海への憧れ」とツイート。三輪さんに話を聞いたところ、「埼玉県民は、2時間くらいかけないと海に行けないので、海がないことを自虐的に話すことがある。距離標を見つけた際、防災などのためにあるのかもしれないが、海に憧れる県民としては、川の側に設置するほどに憧れがあるようにも思えた」と話す。
管理している江戸川河川事務所によると、距離標は標識と合わせて0.25キロごとに設置。50キロを示す距離標は、付近にある石の杭でできた距離杭を分かりやすくするために設置しているという。
同事務所管理課担当者は「距離標は、河川を管理するうえで、海からの起点を明確にする必要があることから、千葉県市川市の東京湾と江戸川が交わる地点を0キロ地点として、距離を表示している。管理や工事などをする際、この距離を全ての指標としている。付近をジョギングしていた人などから、何のための標識なのか気になっていた、などの問い合わせを受けることもたまにある」と話す。
現在、春日部に海はないが、2020年に国の史跡に指定された「神明貝塚」(西親野井)や「花積貝塚」(花積)などがあることからも、温暖化が進んだ氷河期後に、海面が現在の内陸部よりも奥深くに入っていたため、7500年前~3000年前の間は春日部にも「憧れ」の海が広がっていたと考えられる。