春日部の居酒屋「やきとり居酒屋 江戸っ子長さん」(春日部市備後東1、TEL 048-736-8119)が3月31日で閉店する。店は連日予約が入るなど閉店を知った客が多く訪れている。
1987(昭和62)年創業の同店。店主の長村幸夫さんは、1942(昭和17)年に神田で生まれ浅草で育った。「若いころはよくみこしを担いだ」という長村さん。24歳で春日部に移り住み、薬の製造業に携わっていたが会社が倒産。長男の「居酒屋やろうよ」の一言で、同店を創業したという。
妻の幸枝さんは、「見合いで結婚して43年目。人が良いし、友達が多い」と長村さんについて話し、「昔はみこしに夢中でいろいろあった」と、ほほ笑みながら振り返る。料理の修業は特別していないという長村さんだが、会社員時代は寮で食事を作り、いろいろな店に足を運んでは「目で盗んだ」という。看板メニューは豚レバー、豚タン、モツ煮込みなど。
タンやレバーなどは、「お客さんの顔を見てから切る」と言い、注文が入ってから切って焼くなど、こだわっている。閉店理由については、「昨年の春ごろから手指が痛み出した」と言い、「けんしょうえんになり指が曲がらないし、力が入らない。最初は右手、そして左手と痛くなり、せがれが『辞めたら』と言ってくれた」と話す。
店名の「長さん」は、あだ名をそのまま使った。「みこしの仲間たちに、長村は呼びにくいと言われ、『長さん』と呼ばれるようになった」という。常連客からも「長さん」と呼ばれ親しまれているが、常連客の中にはアニメ「クレヨンしんちゃん」の作者である故臼井儀人さんの名前も。
「6年間くらい来ていた。友人に連れられて2~3回来てから、『俺の隠れ家にするから』と言ってくれ、アニメのキャラクターにもしてくれた」と言い、「『居酒屋デスペラードのマスターヨダ』というキャラクターで、似ていた」とほほ笑む。
8年前からの常連客は、「焼き鳥のおいしい店があると友人の紹介で来た。おいしくて衝撃を受け、以来よく来ている。家族の顔よりも長さんの顔を見ている。長く見てきているからこそ、『店を辞めないで』とは言えない」と話し、「長さんの人柄に引かれていろいろな人が来ている」と続けた。
閉店後は、商店会などの祭りやイベントで「綿あめを売る」という長村さん。「人と接するのが好き」と顔をほころばせる。
営業時間は18時から「店主が疲れる」まで。月曜定休。最終日の31日は貸し切り。