春日部市役所新庁舎の竣工を間近に控え、現庁舎の閉庁まで残り3カ月となった。
1954(昭和29)年に市制施行された春日部市。当時の人口は3万2000人ほどだったが、徐々に増加。特に武里団地の造成で急激に増えるなど、1965(昭和40)年ごろから増加の一途をたどり、1925(大正14)年に建設された庁舎では行政需要が追いつかず、課が分散するなど、運営上支障が出ていた。春日部駅西口側の開発が進展していたことにより、新庁舎を同駅西口側に建設。
1971(昭和46)年1月に現庁舎が開庁。当時の人口8万人の倍の16万人を想定して設計された。総工費は5億9,800万円で、建設工事の設計監理は、建築モード研究所が手がけ、大成建設が施工した。荒川区役所をモデルに、建物正面はほぼガラスで構成し曲線を持たせ、塔屋や側面などは黒を基調とした窯変タイルを使った。
開庁当時の「広報かすかべ」(1971 年1月号)に、後に市長を5期務めた当時の三枝安茂市議会議長は「(前略)市の発展にともない、行政の需要はいちじるしく増大し、いままで市民みなさまに大変ご迷惑をおかけしました。新庁舎の建設にあたっては、われわれ議会としても市民が快適に、しかも便利に利用することができるよう、じゅう分な審議をいたし、名実ともに東部随一を誇る市庁舎と自負いたしております(後略)」(原文のまま)と寄せていた。
同庁舎は2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災で被災。耐震診断と応急補修工事を実施したものの災害時の拠点として耐震性能が不十分な状況と判断し、2014(平成26)年に移転建て替えの方針決定が決まった。
1966(昭和41年)~2007(平成19)年、同所に勤務していた江川肇さんは「開庁当時は管財課にいた。当時、西口の駅周辺の開発は進んでいたが、庁舎周辺は田で、田植えをしている様子を見ることもあり、それもすがすがしかった。庁舎はすごい建物だと思った。特に建物の曲線、アールに驚き、私も同僚も誇らしく思っていた。市民からも、『新しい市庁舎はすごいな』という声を頂いていた。閉庁は、時代の流れ。少し寂しさはあるが、人口も増え、耐震基準のこともあるので仕方ない」と話す。
現庁舎はゆくゆく解体され、「春日部セントラルパーク 交流と健康の広場」をテーマとし、災害時には避難場所として防災機能を備えた公園にする予定。
新庁舎は旧市立病院跡地に建設され、「人に優しく災害に強い市民に親しまれる庁舎」を基本理念とし、現在の庁舎で分散している市民窓口を集約し、利便性の向上を図る。ユニバーサルデザインに配慮し、災害対策拠点となるよう備蓄倉庫や資材スペースを設ける。総工費は、周辺の道路整備などを含め約114億円。
現庁舎は12月28日まで開庁。新庁舎は12月16日に竣工式を行い、1月4日開庁。